「赤いズボンを履いた黒いネズミ」はなぜ愛されないのか? 〜機能的な店名が通用しない業界の正体〜
- qinowa

- 2023年6月1日
- 読了時間: 3分
前回、「店名は『エリア×悩み』にしろ」と書きましたが、これには明確な例外があります。 もしあなたがヘアサロンを開業するとして、**「六本木・髪切る店」**という名前にするでしょうか?
絶対しませんよね。 なぜなら、ヘアサロンや飲食店、リラクゼーションの一部は、単なる「作業」ではなく**「センス」や「感性」を売っているから**です。
今日は、あえて前回の説を否定し、**「抽象的な名前が必要なケース」**についてお話しします。
「ミッキーマウス」の法則
ある読者の方から、こんな指摘をいただきました。
「言語化できない『優しさ』や『センス』を提供する場合、説明的な名前だとマッチしない。 例えば、**『赤いズボンを履いた黒いネズミ』と言われても誰もファンにならない。『ミッキーマウス』という固有名詞(抽象度が高い名前)**だからこそ、そこに愛着や世界観が生まれるのではないか?」
これ、真理です。 名前には大きく分けて2つの役割があります。
説明(検索用):何屋か即座にわからせる
象徴(ブランド用):世界観や憧れを感じさせる
「マイナスをゼロにする」か、「ゼロをプラスにする」か
では、どちらを選べばいいのか? それは、あなたのビジネスがどちらのタイプかによります。
A. マイナスをゼロにする業種(機能重視)
業種:歯医者、税理士、水回りの修理、痛み特化の治療院
顧客の心理:「痛い」「困った」「面倒くさい」を一刻も早く解決したい。
正解:「六本木矯正歯科」「新宿相続税理士事務所」
ここに「センス」は求められていません。「確実な解決」が欲しいので、説明的な名前が最強です。
B. ゼロをプラスにする業種(感性重視)
業種:ヘアサロン、カフェ、アパレル、高級スパ
顧客の心理:「可愛くなりたい」「癒やされたい」「非日常を味わいたい」。つまり言語化できない「快」が欲しい。
正解:「SHIMA」「Starbucks」「Qinowa」
ここで「六本木カットパーマセンター」のような名前だと、**「この店にはセンスがない=技術もなさそう」**と判断され、逆に客足が遠のきます。
言語化できない価値には「箱」が必要
ヘアサロンに行きたい人は、「髪を短くする機能」だけでなく、「あのおしゃれな空間にいる自分」を買っています。 その「雰囲気」や「空気感」といった言語化できない価値を詰め込むためには、あえて意味を限定しない**抽象的な名前(=箱)**が必要です。
「赤いズボンを履いた黒いネズミ」という説明的な名前では、そのネズミの性格や物語(ストーリー)を想像する余地がなくなってしまいます。
結論:ハイブリッド戦略を目指せ
もしあなたが、「痛み治療」だけでなく、**「心身の解放」や「ラグジュアリーな体験」**を提供したいなら、店名は抽象的で構いません。
ただし、無名のうちは検索されないという弱点があります。 だからこそ、今の時代は**「ハイブリッド」**で戦うのが正解です。
店名(ブランド名):抽象的で美しい響きにする(例:Qinowa、Harika)
タグライン(説明文):機能的で検索される言葉を入れる
× 悪い例 店名:六本木リラックスマッサージ
◎ 良い例 店名:Qinowa(キノワ) タグライン:六本木の喧騒を忘れる、深層筋アロマセラピー
これなら、「センス」という魔法をかけつつ、「検索」という現実的な集客も逃しません。 あなたが売りたいのは「機能」ですか? それとも「魔法(体験)」ですか? それによって、つけるべき名前は180度変わります。


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